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最高裁判所第一小法廷 昭和27年(あ)6264号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人河上丈太郎、同美村貞夫の上告趣意第一点について。

昭和二〇年勅令第五四二号は日本国憲法にかかわりなく、同憲法施行後も、同憲法外において法的効力を有していたことは当裁判所の判例とするところである(昭和二四年(れ)第六八五号、同二八年四月八日大法廷判決、集七巻四号七七五頁以下)。また、本件昭和二二年勅令第九号は右勅令第五四二号が法的効力を有していた間に、同勅令に基いて適法に制定されたものであって、一旦適法に制定された法令は、その後の法令により廃止されるまでは、その効力を失うものでないことも、当裁判所の判例の趣旨とするところである(昭和二四年(れ)第一九一八号同三〇年一〇月二六日大法廷判決、集九巻一一号二三一三頁以下)。それ故、昭和二〇年勅令第五四二号及びこれに基いて制定された本件昭和二二年勅令第九号は、平和条約の発効と同時に当然に失効するものであるとはいえない。されば、これが当然失効したものであることを前提として、昭和二七年法律第八一号及び同年法律第一三七号が無効であるとの主張も採ることを得ない。

次に本件昭和二二年勅令第九号は、昭和二七年法律第八一号によって、特別の措置のなされない限り一八〇日間を限り法律としての効力を有するものとせられ、更に同年法律第一三七号により、引つづき今後も法律としての効力を存続するものとせられた。すなわち、右昭和二二年勅令第九号は、平和条約発効後は前記二法律の規定により法律としての効力を有するに至り、その内容は法律によって規定せられたものとなったのである。従って、右昭和二二年勅令第九号は、平和条約発効後は、法律の委任により法律で規定すべき事項を命令で規定する所謂委任命令たるの性質を有せざるものとなったことは明らかであって、これを平和条約発効後もなお委任命令であるとして違憲を主張する所論は、前提を欠くものであって、採るを得ない。

同第二点は量刑不当の主張であり、弁護人五井節蔵の上告趣意第一点乃至第三点は違憲をいうが、その実質は原審で主張判断のない第一審判決の単なる法令違反を主張するに帰し、同第四点、第五点は違憲をいうが、その実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であり、被告人本人の上告趣意は事実誤認の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎)

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